哲本哲思

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第五回 私的文学論

「私的文学論」とうるさく、仰々しい題をつけたわけであるが、そこまで深くには立ち入らないし、そこまで体系的な「私的文学論」があるわけではない。表面的ではあるが、最近の論考をまとめていくことにしたい。

 

この一つの命題について私的な文学論を展開していくことにする。

 

「文学は必要か、否か」

 

私は文学部の学生であり、文学作品が好きな身である。ゆえに、文学は人生にとって必要なものだと思っている。このただ一つの主張から始めたい。

 

最近、森見登美彦夜は短し歩けよ乙女』を読んでいる。以前のブログでも言及した通りである。途中段階ではあるが、「幸せとは、幸せを探すことにある」というようなセリフを登場人物に語らせる場面があった。

 

この例から述べたいのは、文学は人生におけるヒントを与えてくれるということである。作者が登場人物に語らせる文言一つ一つには意図がある、と仮定するなら、作者が人生に対する羅針盤のようなものを、文学を通して与えてくれるとも言えるかもしれない。作中の一つ一つの文言に目を向け、精読し、考えることで文学が問題提起し、主題にするテーマについて考えることができるのだと思う。

 

ふとした一文からあなたは人生のヒントを得ることができるかもしれない。そこに文学が人生において無駄なものではないと言える所以であると思う。必ずしも必要ではないが、決して不要ではない。

実益が見込めないものであっても、まわりまわって実益となることがある。それが文学なのかもしれない。いささか、文学を「実益」という観点で捉えるのは気に食わないが、そういう捉え方もできるということを示しておく機会としたい。

 

「一見、必要ではないと思えるものが、人生を豊かに、余裕のある人生を作ってくれる」と思う。